恋なんて、いつぶりだろうか。
前世だったかもしれないし、その前かもしれない。
少なくとも現世ではない、それくらい、昔。
曖昧な記憶。それでも。
苦く、辛く、時に甘酸っぱいその味は鮮明に蘇ってきた。
胸を満たすこの感情は、恋なんて生半可な物じゃないかもしれない。
だって。貴方のその細い首をこの指で絞めて僕のこの手で、


　殺　し　た　い　。


食い込む僕の指を、手を、掻き毟り抵抗して貴方が、やがて動かなくなるまで。
―――そうしてしまったらその身体に、貴方は居なくなると解っているのに。
どうしても、自分の物にしたくなる。




（そう、例えそれが　抜　け　殻　、でも。）




恋というものは初めてじゃないけれど、こんな異常な感情は初めてかもしれなかった。 
どの世でも自分は、こんな感情、懐いた事はなかったはずだ。
もしも一度でも懐いた事があるのなら、上手い昇華の仕方くらい覚えているだろうに。 
理性で押さえつけるのも、もう…正直、かなり辛い。
けれども、この関係を崩してしまうには―――此処はあまりに居心地が良すぎた。
だから、辛くともそれでも。
僕は、貴方に許される限り、貴方の傍に居たいのです。


「骸さん、」
「はい？」
「お願いが･･･あるんだ。」
「なんでしょう？」
「俺がもし、生きるのに疲れたら･･････楽にして、くれる･･･？」
「･･･、･･････」


（あなたは、ずるい）
知っている、この内心を。
解っているからこそ、




「―――･･･喜んで。」




口にする。
他の誰かに頼めないから、僕だから、こそ。
君の死を密かに想っている僕だから。





残酷で愛しい貴方。











嗚呼願わくば。
貴方を連れて、共に輪廻を回りたい―――。